約30万部のベストセラーである『「学力」の経済学』の著者、中室牧子氏による「教育に科学的根拠を」と題した日本青年会議所教育部会30周年記念講演を拝聴しました。
政府の有識者会議で、経済や金融はデータや根拠をもとに、議論されるにもかかわらず、教育の有識者会議ではいわゆる教育者といわれる高齢の方の経験をもとに議論が進められる。個人の経験は重要だが、必ずしも全体を現すものではないので、果たしでそれが21世紀の子供の教育にどれくらい必要なのか。という話からスタートしました。本に書かれていることはパワポでわかりやすくまとめられて、本にない内容(読んでからしばらくしてたので忘れてただけかも)もあり、充実した内容でした。もう一回読もうと思います。
会場で笑いが起きたのが、小学生の時に夏休みの宿題をぎりぎりになって片付けようとする子は禁煙、ダイエット、貯金などが苦手で、大人になったときに課題を先送りする傾向があるエビデンスがあるということでした。
財務省VS文部科学省の少人数学級の議論について、財務省はいじめの件数が増えたと主張するが、調査対象の2011年は東日本大震災が発生した年であり、いじめの認知件数は社会情勢にも影響されるので、それをもって35人学級の効果のある、ないは検証できない。文科省と財務省で議論がずれている。
※35人学級だと、1クラスの人数が36人になると、自動的に18人×2クラスになります。習熟度別クラス編成によってクラス人数に強弱をつける方が教師の目は行き届きやすく、運営もしやすいだろうなと思います。塾で働いていた経験からなので、学校の学級運営とは違う点もありますが・・・
以下が講演メモです。
〇個人の経験は必ずしも全体に当てはまらない。
〇例外的なことほど衆目を集める傾向。例外をマネしても同じようにいくとは限らない。
〇アメリカではブッシュ政権時、「教育に科学的根拠のある研究を」「効果なきものに予算なし」の方針。
〇エビデンスとは、数字で計測できるもの。因果関係が明らかなもの。
⇔相関関係ー同時に動くけど、関係性がはっきりしない。例、読書と学力。
因果関係があるならば、読み聞かせが効果あり。逆に図書館の本を増やすことは本を読みたい人、関心のある人だけへの投資となる。
〇世界では教育効果の測定が行われているが、日本では行われていない。
〇教育にコスパを求めることに異論があるが、コスパの低い、効果のない施策を税金で実施することは次世代への負担増でもある。
〇日本の教育関連予算GDP比3.8%に対して、先進国は5.6%。
〇投資すべきは就学前&小低学年。収益率が高い。貧困層はどの区分でも効果が高い。
〇必要な非認知能力(可能性や将来の成功につながるのに必要な力)が重要。
自制心+やりぬく力(GRIT)
〇マシュマロテスト
目の前のマシュマロ1つ。先生が戻ってくるまで食べずに我慢できたら、2つ食べれる。15分後戻ってくると、4歳の2/3が先生が帰ってくるのを待てない。→自制心
〇やりぬく力は中高の部活で養うことができる。
〇日本で研究がすすまない理由
全国学力学習状況調査が統計ではない。情報公開されていない。
第3者による外部評価が定着しない。