人事院勧告制度は国家公務員が労働基本権制約の代償措置として、情勢適応の原則に基づき、国家公務員の適正な処遇を確保しようとするものです。それに準じて本市の職員の処遇に関する規定も整備されます。
2016年度の中小企業白書によると、大企業、中小企業合計で約382万の企業数です。
人事院勧告では、
〇全産業の企業規模50人以上、かつ、事業所規模50人以上の全国の民間事業所53,426事業のうち抽出調査となるのは、11,711事業所であり、民間の給与実態を正確に反映されてるとはいいがたい面がある
〇増え続ける社会保障費や1千兆円を超える国の借金といった国の危機的な財政状況が勧告に反映されない
という課題があります。
しかしながら、その時々の経済・雇用情勢等を反映して(労使交渉等によって)決定される民間の給与水準に準拠して国家公務員の給与水準を定めることは合理的であり、また、比較方法についても、単なる平均額等ではなく、主な給与決定要素である、役職段階、勤務地域、学歴、年齢を同じくする者同士の給与額を対比させるなど精緻な方法をとっていることから、それに準じる形で、本市においても適用することは一定妥当性があると言わざるをえません。
今年度の人事院勧告では、
〇配偶者に係る手当額を他の扶養親族に係る手当額と同額まで減額し、それにより生じる原資を用いて子に係る手当額を引き上げ
〇国家公務員の行政職俸給表8,9,10級相当の職員の扶養親族に係る手当の不支給or減額
という扶養手当の見直しが含まれています。
【質問】
本市では扶養手当の見直しを実施しますか。また、それにともなう歳出の増減を試算していますか。
【答弁】
本年の人事院勧告で示された国家公務員の給与制度改正のうち、扶養手当の見直しについては、いわゆる民間給与の実態調査結果に基づいたものではなく、人事院として、配偶者手当をめぐる状況の変化等を踏まえて、配偶者に係る手当額を他の扶養親族に係る手当額と同額まで段階的に減額し、それによって生じる原資の範囲内で子に係る手当額を引き上げるものです。
このように、今回のこの勧告内容が民間給与の実態調査結果に基づくものではないこともあり、全国の地方人事委員会の勧告内容については、分かれているところです。 今回のこの制度改正における影響額については、現在試算中ですが、本市における この勧告内容の取り扱いについては、全国他都市の状況や、影響額だけでなく、この勧告内容が、我が国全体として少子化対策が推進されていることに配慮していることを踏まえて検討する必要があると考えております。
【質問】
人事院勧告により、国家公務員の手当が増額されたとしても、本市において、明らかな財政悪化が見込まれる場合や行政改革が必要な場合はどのように対応しますか。
【答弁】
人事院勧告は、議員ご指摘のとおり、公務員の労働基本権制約の代償措置として、「情勢適応の原則」に基づき、国家公務員の適正な処遇を確保するためにおこなわれるものであり、本市を含めた地方公務員については、地方公務員法24条3項に規定された「均衡の原則」に基づき、この国家公務員の勤務条件に準拠して決定されるものであります。
議員お尋ねの、明らかな財政悪化が見込まれる場合や行政改革が必要な場合における人事院勧告の取扱いについてですが、例えば、過去には、阪神大震災のあった平成7年に、人事院勧告はおこなわれましたが、その影響を受けた兵庫県や神戸市人事委員会においては、勧告が行われなかったことから、本市においても改定を1年見送り、その翌年に前年度の人事院勧告とあわせて給与改定を行った事例がございます。今後も、本市職員の給与改定方針については、先程の関係諸法令の規定に基づきながら、その時々の本市のおかれた状況を総合的に判断して決定すべきものであると考えております。
【意見】
阪神大震災が発生した平成7年、人事院勧告が行われたが、その影響を受けた兵庫県や神戸市の人事委員会で勧告が行われなかったことから、本市においても改定を1年見送り、その翌年にあわせて改定を行った事例がありました。また、「本市職員の給与改定方針については、関係諸法令の規定に基づきながら、その時々の本市のおかれた状況を総合的に判断して決定すべきものであると考える」という答弁から、明らかな財政悪化や行政改革の必要性が見込まれる場合には、必ずしも従わなければならないということではないようです。 今後の財政状況の推移を注視していきたいと思います。